根管治療専門医相談室

根管治療専門医、新藤健太郎がお答えします。

66.根管が見つかりません(長編)

【Question 66】

part1

13年前に左下の親知らずの前の歯2本がないので金で保険外のブリッジを作り、親知らずを支えにしています。2年前に親知らずが眠れないほど痛み出したので、ブリッジに穴をあけて神経をとりました。穴をあけると血が噴き出してきたそうなので炎症をおこしていたみたいです。そのあと消毒、薬をつめたりしてプラスチックでふたをしました。それで痛みはなくなっていたのですが、10月頃からまた痛み出したので、ふたをあけて消毒したり、神経をミイラ化する薬を使ったり、レーザーをあてても効果はなく、ブリッジを外すこともできず我慢するしかないと言われたので、大学病院にいきました。大学病院ではレントゲンの結果、神経が3本あり1本は処理されているが、処理されていない神経が腐ってきて!
いて膿も少したまってきているので掃除しなければならないと言われました。それで、ブリッジをもう少し削って治療を始めたのですが、1時間かけても神経がみつかりません。マイクロスコープなども使わず肉眼だけでみつかるものでしょうか。また来週に1時間かけて治療する予定なのですが、みつからないで、削ってばかりで最後歯がボロボロになるのではないかと不安に思っています。痛みも最近では時々痛いだけで我慢できないほどではなくなってきているので、治療をせず薬をつめてふさぐほうがいいのではないかと思っています。膿がある腐った神経をほっておいたら他の血管に細菌が回って体に悪くなるのでしょうか。それとも痛みが軽かったらそのままにしておいたほうがよいのでしょうか。長くなりましたが、!
ろしくお願いします。

part2

この間神経がみつからないことでメール相談したものです。早速のご返答どうもありがとうございました。またお聞きしたいことがあるのですが。大学病院ではすぐには神経が見つからないことはよくあることだし、マイクロスコープよりも手の感覚が大事とか言われたのですが。すぐにみつかればよいが、なかなか見つからず、神経を見つけるために削りすぎて、結局ブリッジや歯を壊すことにならないかと心配です。やはり保険外でしているような歯医者にいったほうがよいのでしょうか。といってもインターネットでしかみていないのでどんな感じかはわからないのですが。痛みがだいぶ楽になったので、このまま塞いだ場合、膿が大きくなって骨をとかしたりすることはあるのでしょうか。痛みが楽になったのは一!
時的なものなのでしょうか。根の中ではどんどん悪くなっていくのでしょうか。ブリッジの支えがだいぶ削られているのですが、プラスチック?みたいなものでふたをすれば強度的には大丈夫なのでしょうか。何度も質問して申し訳ありません。よろしければご返答ください。

part3

ブリッジの支えの左下親知らずの根幹治療について何回か相談したものです。その親知らずには2つ神経があるらしく、一つが2回各1時間ほど治療がありましたが、みつかりませんでした。それらしいところはあるので、もう少し削ったら見つかるかもしれないが、歯の二股に分かれている近くにあるので、削れば歯が壊れてしまうかもしれないので削らないほうがよく、このまま見つからなければ、抗生物質などで痛みをとるしかないといわれました。やはり削らないほうがよいのでしょうか。それと、マイクロスコープでは親知らずは見えないので使えないと言われたのですが。何度も質問して申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

【Answer 066】

根管治療.com の新藤健太郎です。

早速ですが本題に入ります。

part1

まず、親知らずの根管治療は基本的に難しいです。その理由は、根管の形が複雑だからです。
ブリッジを外さずに治療をしているのも、治療を難しくしていると考えられます。
神経の入り口(根管口)が見つからない事はよくありますが、顕微鏡を使ったほうがもちろん発見率は高いです。
それと、大学病院の場合は、研修施設でもあることから、若く経験の少ないドクターが多く、治療が進みにくいこともしばしばあります。

お痛みが楽になってきているとの事で、このまま塞いでしまうことも選択肢に入りますが、膿、根尖病巣がある場合は、根管治療を行うことが基本です。熟練した術者が顕微鏡の使用をするのが理想的です。
腐った神経を放置し他の血管に細菌が回って体に悪くなる可能性は低いので、菌血症、敗血症はあまり気にしなくて良いと思いますが、高齢者の場合は感染源がないほうが全身的な問題は起こりにくいとされています。

part2

「マイクロスコープよりも手の感覚が大事とか言われた」

手の感覚が大事なことに異論はありませんが、見つからない神経の入り口は石灰化している可能性が高く、顕微鏡で覗きながら、石灰化した部位を超音波チップで削り、根管を探すのが現代の治療です。

http://xn--v6qp5bu1pjtqgubwx0axs5c.jp/?cat=3 (根管口の探索)

「神経を見つけるために削りすぎて、結局ブリッジや歯を壊すことにならないかと心配です。」

心配だと思います。

「やはり保険外でしているような歯医者にいったほうがよいのでしょうか。」

腕がいい先生に診てもらったほうがいいのは一般的な事実です。

「このまま塞いだ場合、膿が大きくなって骨をとかしたりすることはあるのでしょうか。痛みが楽になったのは一時的なものなのでしょうか。」

そのまま塞ぐのも手ですね。歯に穴が開いたり、薄くなるのは心配です。下手な先生がいじくると余計に状態が悪くなることは十分考えられます。

根尖性歯周炎は、慢性状態から時に急性状態になります。完治しない限り、また痛くなることはあるでしょう。

「プラスチック?みたいなものでふたをすれば強度的には大丈夫なのでしょうか。」

クラウンの上から穴を開けていると思うのですが、ブリッジの強度はやはり落ちます。
しかし、臨床的に問題なく使える場合もあります。

part3

「マイクロスコープでは親知らずは見えないので使えないと言われた」とのことですが、マイクロスコープがあるのに使わないのでしょうか?親知らずだから見えないという話は聞いたことはありません。
マイクロスコープが使えない、使ったことがない、歯内療法の専門でもない先生にこれ以上危険な治療はさせないほうがいいと思います。

いまの先生ならこのまま被せる。
専門医なら顕微鏡を使用しもう一度探してもらう。

という2択です。